アーユルヴェーダの浄化法の中でも、
催吐法(ヴァマナ)は、
できればやらずに生きていきたいと思っていました。
下剤や浣腸は抵抗がないけど、
自ら吐く、という行為に抵抗感がありました。
でも、あるアーユルヴェーダの先生のところで、
クリニックに通って勉強させてもらっていた時、
ここでなら、私もヴァマナやれるかもしれない、
今しなかったら一生しないかもしれない、
と思って、ヴァマナすることを決意しました。
ヴァマナは主に体内の悪化したカファを外に出す浄化法です。
喘息持ちの人や皮膚病の人などなどに、
病気を治すことを目的にアドバイスされますが、
健康な人も、健康を維持・増進するために、浄化法を定期的にするのが理想です。
春先は、カファが増加する季節なので(健康な人でも皆)、
その季節にヴァマナを行うことが良いとされていて、
私もその時に行いました。
私は特に不調もなかったので、健康目的のためのヴァマナです。
まずヴァマナに向けて、体の準備をします。
前処置です。
1 まずは、消化力を上げて、
体内の未消化物(アーマ)を消化するための薬を摂ります。
この目的は、体内に未消化物があると、
いくら浄化法をしても体が浄化されないからです。
そしてもう一つの目的は、
消化を促すための薬を摂ることで、
次に行う油剤法で油がよく体内に吸収されることを狙っています。
私は消化剤を3日間摂りましたが、
その人の消化力や未消化物の残り加減によって期間は異なります。
この時摂った消化剤はトリカトゥ(黒胡椒、長胡椒、乾燥生姜の粉)。
2 それが終わると、油剤法と発汗法をします。
油剤法は、油を飲むことと(内服)、
油を体に塗り込むこと(外服)、
の両方をします。
飲む油は、
通常、薬用ギー(精製バター)やごま油。
シンプルにギーのみのこともあります。
私はその一年前に皮膚病になっていて、
その頃にはすでに治っていたのですが、
それに合わせた薬用ギー(panchatikta ghrta)を飲みました。
油剤法の期間は、
これも人によって異なり、通常3-7日間です。
体がちゃんと油ぎっているか、
どういう便が出たかなどの症状を見ながら、
止め時や次の日の飲む油剤の量を決めていきます。
私は3日間でした。
というのも、3日目には薬用ギーを飲んで下したからです。
下す、ということは、
もう消化ができないから体内に吸収されることもありませんので、
これ以上飲んでも意味がないということで、
私の油剤期間終了。となりました。
油剤の量は、日々少しずつ増やしていきます。
私が飲んだ油剤の量は、
1日目60ml, 2日目80ml, 3日目90ml。
少ないです。
子供の時からギーに慣れ親しんでいるインド人は
最終日には私の2倍の量くらいは飲みます。
その上、
インド人の最終日は大体5-7日目です(個人差あります)。
尊敬に値します。
私は3日目90mlで下しました。
ギーを飲むのは、過酷です。
いくら毎日の料理でギーを使っていても、
一気に大量のギーを数日間飲むのは大変で、
その時ばかりは、ギーが大嫌いになります。
鼻をつまんで、味わうことなく、一気飲みです。
ギーを飲んでしばらく経っても、
鼻にギーの香りがまとわりついて、
どこまでも付いてきて、
お湯を飲んでも取れないし、
はっきり言って浄化法をすると決心したことを後悔する時期です。
この油剤法の期間は
毎日、油を体に塗り込む全身オイルマッサージと発汗法もします。
この期間は、
早朝に油剤を飲んだら一日中白湯を飲みます。
油剤が消化され、お腹が空くまで待ちます。
それはお昼過ぎかもしれないし、夕方になるかもしれません。
そしてやっとお腹が空いたら、軽食を食べます。
消化に重いものや昼寝をしてはいけません。
油剤を飲んで、
何時間後に空腹がきたかも次の日の油剤量を決める重要なポイントです。
浄化法の前処置として、油剤法と発汗法をする理由は、
油剤を内服・外服することで、
体内の悪化したドーシャ、へばりついたドーシャを柔らかくして、
発汗法によって、流れを良くし、
そのドーシャを体の中心部である消化器官に集めて、
浄化法によってそれらのドーシャを外に出す。という仕組みです。
ですので、この前処置は大切な期間で、
これがうまくいかないと、
いくら催吐法や下剤をかけても体は浄化されません。
3 ヴァマナ前日の夜は、
ますます体内のカファを悪化させて、
本番でカファを出しやすくするために、
前日の夕食は意図的にカファを悪化させる食べ物を食べます。
私はキールという、
牛乳と一緒に柔らかく煮込んだ米に砂糖を入れた美味しいやつを食べました。
もうギーを飲まなくて済むという解放感はすごいものです。
そして次の日の本番に向けて、早くに就寝です。
主処置。
1 催吐法(ヴァマナ)本番の日。
早朝に家を出て、クリニックに向かいました。
そこで最後のオイルマッサージと発汗をします。
1日の中でカファが増える時間。というのがあって、
そのカファが増える早朝の間にヴァマナをします。
大体6-10am。
私のヴァマナにはクリニックのマダム先生が付き添ってくれました。
一緒に成功祈願のお祈りマントラを唱えてから始めます。
一般的には、まず催吐薬を飲んで、
しばらくしてから、
ひたすら大量の煎じ液、牛乳、サトウキビジュース、塩水などを状況に応じて、
胃に流し込むように飲む。ということを行います。
これらの液体をできるだけ大量に、
味わうことなく、
次から次と胃に流し込み、
それをやればやるだけ、
前処置で胃のあたりまで集められたドーシャたちが、
飲んだ液体と共に胃から出てきやすくなります。
喉元まで波波になるくらいまで飲んで飲んで飲んだ方が、
飲むのは辛いけど、
すごく気持ちいいくらいに吐くことができます。
私の場合は、催吐薬を飲まずに行いました。
これも個人差がありますが、
催吐薬を飲むと時々胃に負担になることがあって、
それを避けるために、
飲まなくてもある程度の効果が得られるという
クリニックの先生の方針でそうしました。
それから、大量の液体を飲んでいきました。
私が飲んだのは、甘草(yashtimadhu)の煎じ液です。
これは一般的にヴァマナの時によく使われる煎じ液で、
煎じている時の香りがすでに吐き気を催すような、
なんとも微妙な甘い香りです。
牛乳やサトウキビジュースは冷たい性質で、
ピッタの悪化も見られる場合などに併用します。
私の場合はこれらは飲まず、甘草の煎じ液のみで行いました。
傍で付き添ってくれているマダムが次から次へとコップに煎じ液を汲み、
私がそれを間髪入れずグビグビ飲んでいきます。
私は、それまで何度も患者さんのヴァマナを見ていて、
躊躇なくたくさん液体を飲んだ方がスムーズに出てくることを知っていました。
なので私も頑張って、飲み続けました。
いっぱい飲むと、ちゃんと出てきます。
隣にマダムがいて、見ていてくれるので
とても安心してできました。
飲み続け、吐き続けていると、次第に疲れてきます。
私は健康だったからか、カファが少しだけ出て、
そんなに出てくる気配もなかったので、早めに終わりました。
最後に塩水を飲み、吐いて終了。
塩水は最後に体内に残ったカファを削りとってくれるような働きをします。
合計5-6リットルくらい飲みました。
クリニックで見ていた患者さんたちは
9-10リットルくらい飲んでいましたので、
私の量は少ないです。
通常は、飲んだ液体の量と、吐いた液体の量を最後に測ります。
吐いた液体の量の方が多いと、
その分ドーシャがちゃんと排出された、
ということを意味します。
私の場合は測りませんでした。
後処置。
1 ハーブタバコ。
終わったらすぐに、
アーユルヴェーダの薬用のハーブタバコを
鼻から吸って口から出し、
口から吸って口から出します。
(口から吸って鼻から出すことは禁じられています。目に悪いのです。)
このハーブタバコの煙を吸うことで、
喉や鼻の奥に残っているカファを取り除きます。
2 食事制限。
ヴァマナの後は、消化力が弱っていますから、
ムング豆のスープ(水パートのみ)から始めて、
ムング豆のスープ(豆含む)、
そしてお粥(水多め)、お粥(ご飯多め)、普通食、という流れで、
徐々に消化力に合わせて、普通食に戻していきます。
この食事制限を無視して、
浄化法の後、一気に普通食に戻すと、
せっかく浄化された体にまた未消化物が残り、
ドーシャが乱れる、ということが起こり、
浄化が無意味に終わってしまいますので、
気を付けねばなりません。
私が体感した効果。
*お腹がとてつもなく空く。
元々、私は消化力はある方ですが、
ヴァマナ後はそれ以上に消化力が上がり、
気持ち良いくらいに食べたものをさっさと消化し、
身体が軽くなるのを感じていました。
*味覚が良くなった。
ヴァマナ前は
味覚は悪くもないけど良くもないという感じでしたが、
ヴァマナ後はとても味に敏感になりました。
水の味や食事の味がクリアに感じられました。
*自分に自信が持てた。
ヴァマナの効果のなかに、
心(≒心臓)の浄化というものがあります。
カファの主な場所は、胸や胃の上部あたり。
その近くには心臓もあり、
心臓は心の場所とも考えられていて、
そこが浄化されると心も浄化され、心的にも強くなり、
自分に自信が持てるようになると考えられています。
特に私は苦手意識のあった吐くということが
自分にもできる!やればできる!ってなりました。
ヴァマナ効果として、
他にもスロータス(経路)の浄化、
感覚器官の浄化、
特にカファの病気の鎮静などなどが書いてあります。
これらの効果を持続させるためには、
浄化法を定期的に行う必要があると言われています。
また機会があったら、やりたいなと思います。